3.大学院を探す
では、いよいよ大学院を探していきましょう。臨床での経験から抱いた疑問や関心事はどの領域に関することでしょうか。例えば、2型糖尿病の高齢患者さんに指導をする看護師の指導能力について研究したいと思った時、慢性看護学、老年看護学(高齢者看護学)、看護教育学などが検討する領域となります。もしかすると、看護学ではなく、他の心理学、教育学、老年学といった学問の大学院がよい場合もあります。
次に、研究をする環境を考えます。まずは、研究したいテーマの指導を受けられる環境にあるか、つまり、指導教授になってもらえる教員がいるかということです。通常、大学院生の指導は教授や准教授になります。指導を受けたい教員が大学院での教育を担当しているかを確認してください。大学生の卒業研究でお世話になった先生、授業を受けたことがある先生など面識があると、それを糸口にできるかと思います。専門看護師を目指す場合は、なりたいCNSコースを大学院が提供しているかということが重要です。加えて、環境というのは、基礎看護学分野で実験をしたい場合、実験の施設があるのか、大学病院が併設している大学院で患者さんや看護師などにインタビューなどしやすい状況か、子育てや介護などがある場合、通学しやすい立地であったり、オンライン授業や土日の集中講義などの選択があるか、学費などといったことまでが含まれます。新型コロナウイルスの蔓延で、オンライン授業も拡大した点は、遠距離で通学する大学院にとって良い面だと思います。オンライン授業がこれほどまでに拡大する前からでも、群馬県から東京都にある大学院や滋賀県から兵庫県にある大学院など、県境をまたいで大学院へ通学する人もいましたので、大学院生では珍しくありません。ただ、距離があるという面で大変な部分はあると思います。一般的ですが、歴史のある大学院、つまり修了生の多い大学院の場合は、修了してCNSになった人のところで実習ができ、教員も大学院生の指導に慣れているため、スムーズに指導が進むことが多いと思います。現在は、各大学院のウェブサイトを閲覧することで多くの情報は得られると思いますし、YoutubeやInstagramなどのソーシャル・メディアで説明をしてるところもあります。複数の大学院を比較することをお勧めします。
加えて、入試に関する案内も熟読しましょう。試験内容や受験に必要な要件などを確認することは重要です。例えば、専門学校や短大を卒業して看護師になったため、学士号が無い場合、入試の前の適合試験を受けることが一般的です。また、TOEFLなどの英語試験のスコアが必須であったり、英語試験の免除につながったりすることもあります。
大学院によっては、病院などに勤務しながら大学院に行くことも可能です。これは長期履修制度と言います。通常は修士課程は修了年限が2年間ですが、3年間に延期できます。原則的に学費の増額はありません。しかし、修士課程では必修の講義が多くあるため、勤務調整ができないと困難です。また、論文作成時にはまとまった時間を確保することも必要となります。勤務しながら3年間で修了するのか、退職や休職して2年間とするのか、常勤から非常勤に切り替えて、週2くらいの勤務でお小遣い稼ぎをして、2年間で修了するのかなど、勤務先の制度も確認しましょう。研究のデータ収集などで勤務先の病院に協力してもらえるならそれに越したことはありません。良好な関係性が重要です。また、知っている医師の異動先の病院や外勤先の病院など、医師とちょっとしたつながりがあることで、研究の進行が格段に促進されることがあります。今更・・・と思われた方もいるかもしれませんが、少しでも面識があるなら思い切って連絡していきましょう。基本的にCNSコースは実習があるため、常勤では困難な場合が多いですし、この点は指導教員から確認されると思います。